なぜブロガーはジレンマを抱き続けるのか?その1 ブロガーのナイーブ

pikarrr2005-08-30

能動的な反響と受動的な反響


せっかく書いたのだから、やはりブログへの反応は気になるものであるし、できるならば反響は大きい方がよい、と思うだろう。では、書いた記事の「反響」を決める基準はなんだろうか?アクセス数?トラックバック数?コメント数?

トラックバック数、コメント数の多さは、その記事の内容を見て、興味をもったということであり、「能動的な反響」である。しかし能動的ゆえに、あまり多くの「反響」は期待できない。すなわち反応のセンシティビティは低い。

もっと「反響」を感じられるのは、アクセス数だろう。アクセス数はアクセスした人数をカウントするというとても「受動的な反響」であり、数万単位の「反響」も期待できる。すなわち反応のセンシティビティが高い。

しかしアクセス数の反響はかなり怪しいのではないだろうか。アクセス数の増加は、「フィーバーする」かどうかにかかっているからである。




フィーバーする


「フィーバーする」とは、ボクがつくった俗語であるが、デジモノに埋もれる日々」http://c-kom.homeip.net/review/blog/)に「フィーバーする」ということの現象を示した記事があり、大変おもしろい。

実録! 個人ニュースサイトが織り成す「華麗なる波状アクセス」一部始終
http://c-kom.homeip.net/review/blog/archives/2005/07/post_205.html

ここで急激にアクセスが増えている部分がお判りいただけると思います。通常は 5,000PV/日 のところを、7/5、7/6 の2日間だけはその3倍近くにあたる 14,000PV/日 というアクセス数を記録していたのです。その原因を調べてみると、ちょっと面白いことが判ります。それは、影響力の大きな個人ニュースサイトさま同士の相互作用が引き起こす、波状的なアクセスの発生メカニズムについてです。

これは個人ニュースサイトさん同士 が情報を教えあっている図」ではないということです。個々のニュースサイトさんは当然、膨大な読者の方々 を抱えており、それらの膨大な読者の方々が、これらのニュースサイトを経由して、最終的に1つのページ(ネタ)に辿り着く構造になっていることが最も重要なポイントなのです。強烈に面白いネタがあれば、この個人ニュースサイトの情報伝達ネットワークの上を次々に駆け巡っていくでしょう。そして読者の方々は、その個人ニュースサイトのうちのどれか1つの上で、そのネタを目にすることになります。結果的にこうした個人ニュースサイト・ネットワークは、『群』としてメディアの体を為している形になるのです。その影響力は、計り知れないものになるでしょう。

そしてこのような「影響力の大きな個人ニュースサイトのように、ネットのトレンドを生み出す人たちはアルファブロガーと呼ばれているようである。

あるブロガーが、ブログ界ブロゴスフィア)における興味深い話題や興味深い人物を取り上げると、それは無名の状態から一気にブログ界のメジャーな話題に躍り出る。そのような大きな影響力を持った少数のブロガーをアルファブロガーと呼んでいるようである。ネット内世論を左右できるとか、トレンドを動かす力のあるブロガー、あるいは新人発掘の「エンジェル」的ブロガーといえるだろう。

絵文録ことのはネット世論・ネットのトレンドを生み出すアルファブロガー http://kotonoha.main.jp/2004/12/23alpha-blogger.html

アルファブロガーはそれぞれの「膨大な読者」を抱えており持っている。そしてこれらのアルファブロガーは互いにネットワーク化しており、日々どこかで「フィーバー」を生み出しているということだ。




アクセス数と記事の面白さは関係するか


しかしボクはこの記事に違和感を覚えた。「強烈に面白いネタがあれば、この個人ニュースサイトの情報伝達ネットワークの上を次々に駆け巡っていくでしょう。」はたしてアクセス数と、その記事が面白いと思った人の数は関係するのだろうか。

再度言うと、ボクはこのような状況を「フィーバーする」と表現した。そしていままで、「フィーバーする」ことを何度か経験した。それはまさにこの記事のような状態である。あるとき、突然アクセス数が急増する。日々の数百アクセスなのが、目が覚めると津波のように」アクセス数が押し寄せ、一気に数千単位で増えていく。そのアクセス先を調べると、ある人気ブログである。そして多くにおいて、人気ブログは1日で更新されるために、一日、二日で一気に潮は引いていくのである。

このような突然の「大反響」は、驚きとともに嬉しいものである。しかし急激に潮が引いたあと、残されたコメント、トラックバック数は、10件もいかない。はたしてこの数千アクセスのうちの何人が記事を読んだのだろうか。人気ブログにリンクされ、そのリンクをたどってやってくる。ただリンクをクリックしただけで、アクセス数はカウントされる。それは記事がおもしろかったかどうか、もっといえば読んだかどうか、とは必ずしも関係しないのではないか。自分のことを考えると、人気ブログのリンクをたどることは多々あるが、必ずしも記事を読むわけではない、というか読まないことの方が多い。




「ブロガーのジレンマ」というナイーブ


アルファブロガーであろうが、ある特定の人物の関心によって、アクセス数、あるいは「反響」が左右されるのは、あまり気持ちが良いものではない。これは、結局のところ「なぜブログが書くのか。」に回帰するのだろう。

ネットは「見られたい人」を捏造しやすいコンテクストである。だから一銭にもならないのにこれほど熱心に書かれる。しかしまた「見られたい人」は主観的なものでしかなく、決して返答がえられない人でもある。ブログには、見られたい人が見ている故に熱心にブログを書くが、決して見られたい人からは返信がこないというジレンマがある。

人気ブロガーは、趣味でやっている以上、ペースを落とすことは可能なはずであるが、それができないずに燃え尽きてしまうのは、ネット上の多くの人々の中に「見られたい人」が潜んでいるように捏造するからである。このような意味で「ブロガーのジレンマ」は人気ブロガーだけのことではないだろう。ブロガーはみな多かれ、少なかれ「見られたい人」を捏造し、「ブロガーのジレンマ」による焦燥感を抱いているだろう。

ブログはなぜ書かれるのか  http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20040713

望んでいた反響が手には入っり一喜一憂してしまうが、それはある特定の人物の関心に影響されたアクセスの波であるとき、「ブロガーのジレンマ」というナイーブに触れる無神経な「暴力」と感じてしまう。




ブログの儀礼


以前、「リンクは自由か?」という議論があった。それに対して、多くの意見は「公開している以上、リンクを張られることは覚悟しなければならない」というようなことである。ボクもその意見に賛成である。しかしまたたとえば、「トップにリンクを張ってください。」というマナーを守ることにも賛成である。それは、ムラ社会的な内部が作動しているだろうことによる儀礼への期待であり、そこには強制力は働かず、守られないことも覚悟する必要があるだろう。

このようなモヒカン族ムラ社会の象徴的な対立に、「リンクは自由か?」というものがある。(例NWatch ver.4 「リンクは絶対に自由だ」のもとで迫害される人々 http://d.hatena.ne.jp/rir6/20050710/1120937549)これは起こるべくしておこったといえるだろう。・・・すなわちおもしろいのは、ブログ界隈では、ルールではなく、儀礼が重視されはじめているということだ。

なぜモヒカン族なのか。 http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20050711

「フィーバーする」ことに感じる「暴力」も同様な次元にあるだろう。公開している以上、リンクを張られることは覚悟しなければならない。それ以上に人気のブログにリンクされ、アクセス数が増え、多くの人の目にとまることは、ブログを公開している以上、感謝すべきだろう。まったくそのとおりであり、「フィーバーする」ことは実際嬉しいのである。しかしそれでもそこには、「ブロガーのジレンマ」というナイーブが残るのである。




「ブックマーク」というやさしい機能


ここ最近、はてなで正式運用され、流行っているのが「ブックマーク」である。「ブックマーク」の特徴は、「反響の能動性」とセンシビリティのバランスにあるのではないだろうか。「反響」に能動性(積極さ)が求められるほど、「腰が重くなる」ためにセンシビリティは低くなる傾向にあるだろう。

はてなシステムを基準にした場合には、このような「反響の能動性」は、以下のような傾向になるのではないだろうか。

反響の能動性

トラックバック>コメント>ブックマーク>アクセス

「ブックマーク」の人気は、この位置にあるのだろう。トラックバックやコメントするほどには能動的でなく、アクセス数ほどには受動的ではない。

さらにこのような「ブックマーク」の適度なセンシビリティーは、大量のブログ記事の中で面白いものを捜すときに有効に働いている。アクセス数ランキングでは、アルファブロガーのようなブログ単位に反応し、記事の面白さと相関が低くなる。トラックバック数ランキングでは、そのセンシティブが低く、ランキングのダイナミズムに欠ける。「ブックマーク」のセンシティビティは、人気エントリーランキングの反応として適度であり、ブログ界隈という繋がりを活性化しているのである。

はてなブックマークの一番良い所っていうのは何でしょう。その中の一つ(僕は一番だと思っているのですが)は、"○○users"をクリックした先、エントリーページでブックマーカーのコメントをまとめて閲覧できることだと感じています。・・・自分がブックマークしたページに、他の人はどんな感想を抱いているのか。賛同しているのか、疑問をもっているのか。コメントが付けられていれば、エントリーページでそれを俯瞰することができます。

いまそのとき見ているページをブックマークするという行為は、極力シンプルでなければいけません。ページを読んで何を感じたかをおもむろに記していくという行為の流れをなるべく阻害しないよう単純な作業であるよう、とどめておく必要があると思っています。

Hatena::Diary::naoya はてなブックマークTagging http://d.hatena.ne.jp/naoya/20050507

そして「ブックマーク」数による「反響」は、「ある特定の人物の裁量によって、アクセス数、あるいは人気が左右される」のでなく、多くの人の人気のバロメーターとして機能するように感じることができるために「ブロガーのジレンマ」というナイーブに「やさしい」機能であると言えるだろう。