なぜ経済学的予測は必ず外れるのか  経済学の彼岸 その1

pikarrr2007-02-15


賃金水準はいかに決まるのか

まめに読ませていただいている池田信夫 blog」http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuoですが、特に最近の生産性に関する議論は経済学素人のボクでもおもしろい。

生産性をめぐる誤解と真の問題 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/cd4e52fd7cca96ac71d0841c5da0cb75
生産性と格差社会 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b8b2dd3502ef769c7f5baf18143f53e1
賃金格差の拡大が必要だ http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b697e23a80b6602167c2f5e43ebad041

議論は「その国の賃金水準はいかに決まるのか」池田氏による経済学の教科書的?な説明では、以下のように、国際競争が不完全であるというその国に閉じた経済システムによって決定するが、それは山形氏がいうその国の「平均的な生産性」に還元できないということだ。

しかし池田氏が、さらに続けて市場原理主義的にあつく語るときに、そこにある「平均的な生産性」はもはや当初の山形氏のものとは関係がなく、池田氏の考えの差異として浮き彫りになってくる。

賃金水準はいかに決まるのか

・賃金は労働の限界生産性(生産要素を追加投入したときに生みだされる産出量増加分)と均等化する。
・日本では、中国と同じ労働力を投入しても、商品価格が高く、限界生産性が高く、賃金も高くなる。
・商品価格は需要と供給で決まり、需要を決める要因の一つが所得だが、所得水準が上がれば価格が自動的に上がるわけではない。
・国際競争が不完全だから、日中の絶対価格の差が生まれ、賃金差も生まれる。


日本経済が中国との競争で生き残るためには、

・知識集約型の製造業や金融を含む広義の情報産業などの付加価値の高い産業に特化。
・各部門の限界生産性の差に対応して正社員の賃金格差がもっと拡大する。
・優秀なプログラマには契約ベースで管理職より高い賃金を払う。
・生存最低限度より低くなる人にセーフティ・ネットを提供する。




経済学は必ず外れる


池田氏の考えの差異として、浮き彫りになっている「平均的な生産性」は、開かれた市場原理主義の差異としての閉じた日本という「共同体」ではないだろうか。

たとえば最近言われる格差社会では、そこに格差がないわけではないし、悲惨な実情がないわけではない。しかし格差社会論に感じるのは事後性である。格差社会というタームがまずあり、それを確実にするように事後的に次々と証拠が上がってくる。これは最近の環境問題への言説にも感じる。

ある言葉へ還元すること。ニーチェの比喩表現の衝動。「隠喩形成へのあの衝動、人間のあの基本的な衝動、それを無視するならば人間そのものを無視することになってしまうであろうが故に、一瞬たりとも無視することができない、こうした衝動(ニーチェ)」である。だからこれが嘘くさい、くだらないとかでなく、これがまさに「共同体」ではないでだろうか。

それはイデオロギーと呼ぶには稚拙で、しかし実際に経済学というシニフィアンと同じレベルで、経済学の彼岸のシニフィアンとして社会を動かしてしまう。社会的な雰囲気としての世論として大きな影響をもってしまう。

しかしこれらが同じレベルであるというのは、経済学という科学的言説が論理的で、格差社会という言説が億見(ドクサ)であるということではなく、どちらも事後的な規則でしないということだ。そして池田氏「いらだち」がくしくも浮き彫りにしたのは、山形氏とは関係がなく、経済学の彼岸(限界)によって経済学的予測は必ず外れることを知っているからだろう。
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