日本の真のグローバリズムはこれからなんじゃないかな

pikarrr2009-05-11

飽和社会と国家(税金)依存社会


この世界不況で国家の重要性がますます増している。首相が次々とかわるのも、過剰な期待の裏返しだろう。これはおもしろい現象である。

資本−ネーション−国家という三項を考えたとき、資本(市場経済)の調子がいいときには、ネーション(社会関係)が解体され、小さな政府が求められた。しかしいざ不況になると、ネーション(社会関係)の回復は信頼にもとづいているために簡単にはいかない。そのとき求められたのが国家による早急な対策である。即効性が求められる故にそれは当然金銭的な援助が中心になる。

しかしその資金は当然、税金からしか出てこない。そして足りない分は将来への貸しとなる。結局のところ、資本(経済)頼みにかわりがない。

これは単に世界不況だけではなく、長期的な日本の閉塞感からもきている。低成長、高齢化、少子化など、日本のイメージは「飽和」である。この閉塞感は成熟社会の特徴であるといえるが、世界的にもその先端を日本はいっている。

だから最近、言われるのがこの低成長経済の中でも人々はそれなりの幸福に生きることができるのか、もうがむしゃらに働くのは止めよう。質素でも趣味の世界に生きよう。それがいまの日本人の将来像になっている。はたしてうまくいくのだろうか。




「チャイナ・インパクト」


これも一つのあり方であるが、ボクが以前に読んで興味をもっている考え方が、2002年出版の大前研一「チャイナ・インパクト」に示されたヴィジョンである。中国は経済規模から6つのメガリージョン(地域経済圏)を形成している。そして日本もまた地方分権的な経済圏ごとに、それら中国経済圏と密な関係を築いていく。

中国脅威論に凝り固まっているかぎり、本当の中国の姿は見えてこない。この巨大な国家は、政治的にはまだ北京の中央集権国家なのだが、経済的にはすでに別の国に生まれ変わってしまった。今や中国は6つの経済圏が独自に発展する世界最強の資本主義国家である。そこを正しく把握しなければ、日本はやがて中国の周辺国家=10%国家に転落する。これから日本企業は、いかに中国をうまく取り込んで利用するかに大きくかかっているのだ。


「チャイナ・インパクト」 大前研一 (ISBN:4062111527

この指摘は、この世界不況の脱却が中国頼みになりつつあることからもより現実味を帯びてきているように思える。これは崩壊しつつある会社中心主義社会、そして救いを求める虚像的な国家(税金)依存社会を抜けた次のあり方なのかもしれない。




「古代人々は海峡を越えた」


NHKETV特集シリーズ「日本と朝鮮半島2000年」 第1回 古代人々は海峡を越えた http://www.nhk.or.jp/japan/program/prg_090426_3.htmlを見た。古代からの日本と朝鮮半島とは密接な関係にあった。それは国家間ということではなく、都市間のつながりである。

現代では、国境を越えることは、手続き上、また言語も文化圏の大きな障壁があるが、このような差異は日本という強力なアイデンティティもない太古には希薄であっただろう。

日本の僻地は未開地であったのに対して、朝鮮半島は文化が発達し、日本国内よりも経済的な貿易が活発に行われた。これこそグローバリズムの原点であるのかもしれない。

アメリカ主導の新自由主義、金融資本主義は破綻し、世界経済は混迷を極め、保護主義化しているとも言われるが、グローバリズムという意味ではこれは停滞ではなく、さらなる前進であるのかもしれない。アメリカの国策的な強者グローバリズムは限界に達しても、EU、そしてBRICsを含めた世界各地においての本質的なグローバリズムの潮流はさらにつづく、そしてアジアも中国を中心により密接な経済圏となる、あるいはこれからが本番であるともいえる。




日本の真のグローバリズムはこれから


日本企業は十分多国籍化しつつあるが、日本文化圏の閉塞や外国労働者の受け入れなど、制度、文化的にはまだまだである。特に外国人を受け入れることにはまだまだ大きな抵抗がある。しかし外国人労働者を受け入れなくても、国際競争によって富とともに貧困のグローバル化は進む。自然と日本は世界的に裕福な国ではなくなる。

外国人労働者を受け入れることのメリットは単に労働力だけではなく、アメリカのように活力そのものである。社会が閉塞することを回避する。 長期的に見れば、「日本人」という囲い込みは限界を迎える。いままでのようにケインズ的インフレ政策は限界だろう。高齢化、少子化によって、消費そのものへのインセンティブがわかない。

だから日本が真にグローバリズムへ対応する必要が求められるのはこれからではないだろうか。そこではやはり中国とのより密接な関係がキーになるだろう。「チャイナ・インパクト」でもそうであるが、中国とのGDPの差がなくなり、そして日本=技術先進国、中国=後進国という差異も解消されたあとに、日本は自らの立ち位置をどのように位置づけるのか。変わらず精密部品製造技術優位の工場国家?ゲーム、アニメ、お笑いなどを発信するエンターテイメント国家?それがこれからの日本の真の問いかもしれない。
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*1:画像元 ISBN:4875655894