ベーシックインカム(働かない権利)からリビング‐ウイル(生きない権利)へ

pikarrr2009-12-02

現代の大きなトレンドは「他者回避」


現代の大きなトレンドは「他者回避」なんでしょうね。象徴的なのは「コンビニエンスな商品提供」です。コンビニ、ファーストフード、ファミレスなど。これらのマニュアル化されたサービスは経費削減だけでなく、客への不干渉ということが価値になっている。

なのにネットでは人々は異常なほどに他者を求めているわけですが、ネットの魅力は関係の脱着が容易であるということでしょう。自分の都合でくっついたりはなれたりでき、実社会のようにコントロールできない継続した関係性を持たない。ネットコミュニケーションは「コンビニエンスな他者関係」といえる。




快適な「コンビニエンスな貧困生活」


現代の貧困問題の難しさもここにありますね。かつてのように社会的な搾取により貧困であるという面と、貧困者が「他者回避」したい故に貧困を選択しているという表裏がある。たとえば派遣やフリーターは単に正規雇用されないというだけではなく、社会関係に深く埋め込まれず、他者回避して労働したいという傾向もあるわけです。

ネットカフェ難民と言われた人々もまた裏表があります。確かにあまりお金がないことは確かでしょうが、本当に行き場がないのか。ネットカフェが他者回避された快適で「コンビニエンスな宿泊施設」なわけです。

現代の貧困者が怒らない理由の一部もここにあるのでしょう。そもそも他者回避したライフスタイルをみずから選んでいるという面がある。さらには労働運動のような他者との関係は重たく回避したい。

だから社会保障にしても自立支援など重たくて、ベーシックインカムのような何も言わずただ金が振込まれることを望むわけです。生きる最低額が振込んでくれれば、他者回避は確保される。ベーシックインカムとは「コンビニエンスは社会保障といわけです。

「コンビニエンスな商品提供」「コンビニエンスな他者関係」「コンビニエンスな宿泊施設」「コンビニエンスは社会保障それが、快適な「コンビニエンスな貧困生活」というわけです。




貧困者と経営者の利害の一致


これは現代の貧困者が怠け者であるということではなく、ものいわず低賃金で働く彼らがいるから、いまの日本の経済はなりたっている。もはや企業は多くの正社員を雇用するだけの経済力がなくなり、非正規な雇用によって維持されている。現代の経済はこのような着脱容易な低賃金な労働力によって支えられているわけです。

貧困者にとって他者回避のための「コンビニエンスな仕事」と、経営者にとっても切り離し容易な便利な労働力という必然的な利害の一致があるわけです。

それによって、またきめ細かに配置された安価な商品群がうまれ、お金で買えないものはない社会が維持され、そして快適な生活に必要なコストが下がっている。さらにネットの発達は大きいでしょう。楽しみのコストをただにしてしまった。極端にいえば食料費と寝床が確保されれば楽しく生きていける。それが現代の成熟した資本主義構造なわけです。




ベーシックインカム(働かない権利)からリビング‐ウイル(生きない権利)へ


他者回避はアディクト(はまる)と深く関係する。その場限りの快感を繋いでいく。ほんとうに人はそれて生きていけるのか。それに対比されるのが他者との関わりを成熟させていくことでしょう。他者との関わりの継続した関係(それはしがらみでもある)を築くことで、人は社会に対しての責任ある主体となるわけです。

しかしこの理性主義的な考えは古くさく支持されないでしょう。それだけではなくもはや発達した資本主義社会では維持されない。あるいは理性主義自体が資本主義社会が生んだ無理ゆえの理想幻想ともいえる。

どちらにしろ、怖いのは他者回避はコンビニエンスな生活を指向するわけですが、容易に想像できるのは、アディクトがとぎれたときに、アディクトが目的ならそもそもなぜ生きるの?という問いが浮上する。

現に自殺者は増加しているわけですが。究極の他者回避は死ぬことであり、そしてそこに究極の「コンビニエンスな生活」がある。たとえばベーシックインカムが「働かない権利」を開くなら、次にリビング‐ウイル「生きない権利」へ向かう可能性は高いでしょう。

リビング・ウィル *1


リビング・ウィル(Living Will)は、生前の意思という意味の英語の音訳。リビング・ウィルとは、生前に行われる尊厳死に対してであれば「尊厳死の権利を主張して、延命治療の打ち切りを希望する」などといった意思表示のこと。またそれを記録した「遺言書」などのこと。インフォームド・コンセントの浸透とともに、このような考え方も広まってきた。ほかに葬儀の方法や、臓器提供の可否などがリビング・ウィルの対象として論じられることが多い。


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*1:提供: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

*2:画像元 http://www.j-tokkyo.com/2009/06/24/14976.html