ウェブ上で右派と左派は溶解する?

pikarrr2010-01-06

あけましておめでとうございます。Twitterにはまったこともあって、再びウェブについて考えています。

これから社会がどうなるか、と考えるとき、ウェブの影響は無視できないでしょう。「ウェブ上の社会とはなにか。」「ウェブは富の分配を変えるか。」「ウェブは新たな搾取の構造か。」

お正月は読み返しも含めて関連本を読んできました。面白いのは、ウェブの影響は右派系と左派系ではきれいに裏表に解釈されるんですよね。たとえばウェブが「生産の民主化を進めるという解釈は同じなんですが、右派系では当然「生産の民主化が人々の力になると考えるわけですが、左派系では新たな搾取の構造、人々は無償の労働によって資本主義に貢献させられていると考える。たしかにウェブは新たな成功者を生み出しているわけですが、多くのユーザーは無償で懸命に労働し社会貢献しているが対価なく、生活はウェブとは別の実社会の賃動労によって支えているわけです。どちらが正しいというわけではなく、いままでの分析では捉えられないということでしょう。

ネット経済において、フレックス化は労働のフラクタル化に進化した。フラクタル化とは、時間と活動の断片化を意味する。労働者とはもはや一人の人間として存在しないのである。かれはただネットワークの連続的流動体のなかにとけ込む記号組み替え過程のミクロな断片の、相互に置換可能な生産者でしかない。資本はもはや、長期間にわたって労働者の力能を搾取するために支払ったりはせず、労働者一人ひとりの経済的必要の全範囲をカバーするだけの給与を支払いもしない。労働者は、ただ断片的な時間毎に頭脳処理が可能な機械としかみなされず、時間性能比に対して支払われるだけである。労働時間はフラクタル化され、細胞(セル)化されている。時間細胞はネット上で売られており、会社は必要は数だけそれを買うことができる。

携帯電話は、フラクタル労働者と組替え資本の関係を規定するのに最適の道具だ。認知労働は時間の微視的断片の海であり、細胞化とは単一の半製品を構成するために断片的時間を再結合でいるようにする技術である。携帯電話は、認知労働の組立てラインとみなすことができる。

これが労働のフレックス化とフラクタル化の帰結だ、それはかつてのオートノミーであり労働力の政治的権力だったのだが、いまや認知労働の方がグローバル・ネットワークの資本主義組織に全面的に依存するようになったわけだ。これが記号資本主義生成の中枢をなしている。かつて労働の拒否だったものは、全面的な感情への依存に、情報フローの思想になっている。ししてこうした事態の結果が、グローバル精神を直撃する一種の神経衰弱なのであり、これがいわゆるドットコム崩壊を誘発する。


プレカリアートの詩」 フランコ・ベラルディ(ビフォ) (2009) ISBN:4309245013 P130-131

<保守(右派)系>

ハッカーズ スティーブン・レビー (1984) ISBN:487593100X
ハッカーズ


ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる P・F・ドラッカー (2002) ISBN:4478190453
ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる


・CODE VERSION 2.0 ローレンス・レッシグ (2006) ISBN:4798115002
CODE VERSION2.0


ロングテール 「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 クリス・アンダーソン (2006) ISBN:4153200042
ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ新書juice)


・富の未来 上、下 アルビン・トフラー (2006) ISBN:4062134527ISBN:4062134535
富の未来 下巻


・ウェブは資本主義を超える 池田 信夫 (2007) ISBN:4822245969
ウェブは資本主義を超える


・フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略 クリス・アンダーソン (2009) ISBN:4140814047
フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略


Googleの全貌 日経コンピュータ (2009) ISBN:4822262421  
GOOGLEの全貌 そのサービス戦略と技術

<左派系(ポストフォーディズム分析)>


ミシェル・フーコー講義集成〈8〉生政治の誕生 ミシェル フーコー (2004) ISBN:4480790489
ミシェル・フーコー講義集成〈8〉生政治の誕生 (コレージュ・ド・フランス講義1978-79)


・<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性 ネグリ=ハート  (2000) ISBN:4753102246
<帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性


マルチチュードの文法―現代的な生活形式を分析するために パオロ ヴィルノ (2001) ISBN:4901477099
マルチチュードの文法―現代的な生活形式を分析するために


・グローバル・シティ―ニューヨーク・ロンドン・東京から世界を読む サスキア サッセン (2001) ISBN:448086718X
グローバル・シティ―ニューヨーク・ロンドン・東京から世界を読む


・自由論 現在性の系譜学 酒井 隆史 (2001) ISBN:4791758986
自由論―現在性の系譜学


・魂の労働―ネオリベラリズムの権力論 (2003) ISBN:4791760689 渋谷 望
魂の労働―ネオリベラリズムの権力論


・情報資本主義論 北村 洋基 (2003) ISBN:4272140450
情報資本主義論


プレカリアートの詩---記号資本主義の精神病理学 フランコ・ベラルディ(ビフォ) (2009) ISBN:4309245013
プレカリアートの詩---記号資本主義の精神病理学


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*1:画像元 拾いもの