なぜ円高なのか 「いまって世界的にそういう流れじゃねぇ?」

pikarrr2011-04-28

円高と日本経済の強さ


なぜ円高なのか。静的なマクロ経済学的バランスで説明ができるのかと思って、本やネットで調べてみたが見解はそれぞれ違い、そう簡単な問題ではないようだ。たとえば「全ての人へ」 http://subetenohitohe.cocolog-nifty.com/kopia/2010/09/post-10d4.htmlには六つの理由が示されている。

簡単に考えると・・・日本の通貨レートが(特にドルに対して)高いということは日本の経済が健全な状態にあるという市場の評価である。アメリカや欧州の経済が不安定な中で、いま日本は不況ではあるが対外的には貿易収支は黒字を継続し、財政赤字も自国でまかなわれて相対的に安定している、という日本経済の強さの証と考えてしまう。




円高とドル安のもたれ合い


しかし単純に円高が日本経済の強さを示すと言えないらしい。円高と不景気と貿易黒字は深く関係している。円高になると輸出品の値段が高くなるために製造が海外生産へシフトする。国内製造の業績は悪化するために、賃金が下がり雇用が不安定になる。そして消費弱まり、内需が冷え込んで不景気になる。

これは逆にもたどれる。不景気になると、企業は内需ではなく外需を増やそうとするために貿易黒字になる。貿易黒字で儲けた外貨を円に買いもどすために円高に向かう。だから日本は不景気だから円高だととれる。

さらには、このような傾向を戦略的に使い、最近はアメリカや中国が自国通貨のレートを押さえている。ドル安、元安に抑えることで輸出が伸びて自国の産業が活発になる。

そしてアメリカは慢性的な貿易赤字にあるが、日本が円高で生まれた貿易黒字をアメリカの国債購入に当てることでアメリカの貿易赤字によるドルの下落を買い支えている。日本にしてみれば、ドルの健全性が保たれることで日本製品アメリカへ輸入され貿易黒字が保たれるという、もたれ合い構造がある。このようなアメリカの関係は日本だけではなく、基軸通貨をもつアメリカの強みからくる特徴だろう。




「いまって世界的にそういう流れじゃねぇ?」


為替を決めるのは投資家である。彼らは有名なケインズ美人投票の例のように、静的なマクロ経済学的に反応するのではなく、「この状況を投資家たちは〜とよむだろう」と自己言及的に反応する。すなわちそこに解はなく、周りの様子をそろそろと見ながら反応する。

だから歴史的に一度円高傾向に流れていくと、みなが容認していることが暗黙に容認され、維持するように働く。ただあるとき信用不安を感じるとパニックとともに一気に流れが変わるという予測不可能な反応をしめすのだが。

静的なマクロ経済学的バランスを横目で見ながらも、大国の政策と、その中で生まれるバランス構造に投資家ももたれ合い、いまの円高が維持されているということだろう。だからなぜいま円高なのかといえば、「いまって世界的にそういう流れじゃねぇ?」ってことになる。このような流れを断ち切るにはどこかで刺激が必要なのだろうが、今回の東北関東大震災においても根本的な構造が変化する気配がないほどにいまは"安定"してしまっている。




内需を増やせば景気は良くなる


とはいっても、このようなマクロな経済構造から生まれた円高傾向は、賃金低下、雇用の不安定という日本人生活を苦しめている現実がある。この対策としてよく言われるのは、内需を増やすことだ。

内需を増やせば、国内の企業業績も改善さえて、賃金があがり、雇用も安定化、さらに消費欲が改善されて、さらに内需が増える。それに合わせて、輸入も増えて円高が和らぎ、輸入も増えて、さらに企業業績が改善される・・・と良いスパイラルにのる。

はたして、世界的な支え合い(もたれ合い)の構造がそれで簡単にシフトするかとも思う。投資家、他国政府が円高から簡単に逃がしてくれるか。でも内需が増えれば、景気が少しでも良くなる可能性は高いだろう。




内需のマクロ経済と社会学


改善策として、マクロ経済学にのっとったリフレ政策である貨幣をばらまいて、強制的にデフレを解消してインフレをおこして、金の回りをよくして消費を刺激するという策だ。

或いは、最近「デフレの正体 経済は「人口の波」で動く」藻谷浩介(ISBN:9784047102330)で話題になった、内需低迷の理由が高齢化にあるという考えである。いままでのマクロ経済学にはない消費者の高齢化という新たな性向を取り入れるものである。人口が高齢化することで消費マインドが落ちているので、眠っている1,400兆円の国内資産を活用する政策をとる。

さらには、はたして消費マインドの低下は、高齢者に限っているのだろうか。最近言われる「若者の消費離れ」は景気が良くなれば解消されるのだろうか。これから中心となる第三次産業(サービス業)の雇用は第二次産業に比べて非正規雇用化しやすいと言われる雇用環境が解消されれば若者はみなまっとうな正社員をめざすのだろうか。もはや成熟した社会に適した価値観が必要になる・・・この当たりにくるともはや社会学の領域だ。

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