オートポイエーシス 河本英夫 青土社

有機体の固有性をそれとして明示するためには、以下の条件を満たしていることが必要である。(鄯)物理、化学的に実定される物質的要素とは異質な、特殊な要因を導入してはならない。(鄱)にもかかわらず生命現象と物質現象の差異が機構上明示できなければならない。一八世紀末から一九世紀初頭にかけて成立した「生物学」は、この二つの必要条件をクリアーするような構想をもちえた。それが有機構成である。有機構成は、物質的要素が複合体をなすさい、要素の特定の配置が維持されているような、同一性を保つ構成化の水準を示している。物質的要素が複合性をなして、特定の水準を維持するようになったとき、そこには物質現象には見られなかった新しい現象が生じる。この独自の構成化の水準を指標するものこそ、有機構成である。有機構成こそ生命の特性を具現している。後にベルタランフィが「一般システム論」においてもっとも多用し、システム論の中心に据えたのがこの概念であり、また自己組織化システムの、組織化そのものを方向づけているのも、この概念である。さらにオートポイエーシス・システムにおいては、作動するシステムのモードとしてこの概念が導入される。有機構成は、生命論にとっても、システム論にとっても要となる概念である。
オートポイエーシス 河本英夫