海外の労働はトップダウン型、日本の労働はボトムアップ型

海外のトップダウン型、日本のボトムアップ


「日本の社員は「雑用」多すぎ ワークス牧野氏」https://style.nikkei.com/article/DGXMZO21783530S7A001C1000000が、海外と日本の労働観の違いがわかりやすくて面白い。記事をもとにまとめると、

海外
・海外のトップダウン型。経営優先。
・労働者は代替可能な存在
能力主義。賃金格差。代替可能なので優秀な労働者は引き抜かれないよう高い賃金、代替可能な質の悪い労働者は低い賃金。
・職の流動化。


日本
・日本のボトムアップ型。現場優位。労働者は「カイゼン」に自主的で質が高い。
・労働者は代替可能性が低く、会社帰属意識が強い。
・現場主義。労働者の知はその現場、環境、チームに密接なもので、転職しても使えると限らない。転職を望まない。終身雇用、非能力主義年功序列賃金を望む。


海外のトップダウン型、日本のボトムアップ型。このような海外と日本人違いは、歴史的な背景と繋がっている。西洋では農奴制が残し、農民は与えられて仕事をする労働者であった。対して、日本人の農村は江戸時代から現場主義だった。自ら自治を行い、生産性を行う。それが日本人の勤勉だ。

またITによる生産性向上を考えた場合にも違いは明らかだ。トップダウン型の西洋では、IT化で代替できる仕事を労働者からITへ交換することは容易でスムーズに進んだ。対して、ボトムアップの日本では労働者側に現場スキルがあり、容易にITで代替しにくい面がある。

さらには、労働による商品の受け手側の問題もある。西洋のトップガン型では消費者もまた、サービスがマニュアル的であることになれていて、IT化しても対応できる。しかし日本のボトムアップ型では、現場において労働者と消費者がサービスによって密接に結びついている。対価を超えた長期的な関係=おもてなしをあり、IT化によるマニュアル化に不満を感じるだろう。日本人が、世界一うるさい消費者と言われる所以である。



日本の社員は「雑用」多すぎ ワークス牧野氏
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO21783530S7A001C1000000


海外では、現場で働く社員より、経営者に必要な環境を整えるのを優先します。社員は日々の営業活動や商談内容のデータを打ち込んで報告します。これをERPなどのツールを使って素早く集約し、経営者の判断材料にするのです。社員が報告の作成や入力の手間で苦労するとしても、経営者のために情報を「見える化」するのを優先するという考え方なのです。

営業を例にとってみましょう。海外では、営業担当者は「代替可能な」存在と考える向きが多いです。社員は、会社がマーケティングをして築き上げたノウハウに従って売るよう求められます。個人のスキルは関係ありません。優秀な人がいたとしても、いつ引き抜きにあって辞めてしまうか分かりません。個人のスキルに依存するのは、経営者からみてリスクなのです。データ管理を重視する背景には、こういう事情もあるのです。こうしたデータ重視の傾向は、営業以外の部門でも共通です。

日本でも「見える化」が一時流行しましたが、あまり普及しませんでした。現場の抵抗が大きかったからです。では、なぜ抵抗が大きかったのでしょうか。それは、現場の社員のスキルが米国と比べて非常に高かったからです。

欧米流のERPの考え方には「マネジメントする側が優れていて、末端にいくほど能力が低い」という前提があります。「末端」の社員は比較的低賃金で、その生産性についてもあまり重視されません。

日本はどうでしょうか。日々のオペレーションで、意思決定をしているのは現場の社員です。海外では「日本は意思決定が遅い、上にあげなければ決められない」とよく言いますが、これは部分的に間違っています。意思決定が遅いのは、あるレベル以上の「重要な判断」だけなのです。

日本ではオフィスや工場、店舗などの現場で毎日のように小さな意思決定が行われています。そのスピードは速いのです。代表的なのが、製造業の生産現場で日々実施されている「カイゼン」でしょう。日本の現場は、海外とくらべて非常に優秀なのです。自分で考え、判断できる優秀な人材が現場に集まっているともいえます。個別のスキルが高いから、仕事をきっちりルーティン化しなくてもいいのです。大まかな指示があれば、自分で考えて適切に業務を進められるのが、日本の現場です。