なぜディズニーランドは楽しいのか?(後半)

pikarrr2004-11-21



快楽の意味


ボードリヤール「ディズニーランドとは、アメリカ全てがディズニーランドなんだということを隠すためにある」といいました。これは一般的に言われるディズニーランドという虚構性が、実はディズニーランドに特別なものではなく、もはや社会全体がシミュラークル化している、という意味です。

そういう意味で、ディズニーランドの快楽の構造が特別ではないのでしょう。ボクは現代的な快楽の構造を「情報技術によって加速された、まなざしのネットワーク内の差異化運動のスピード感である。」と言いました。これはまなざしのネットワークの中での「私の意味」をどんどん与えてくれるということであり、消費社会の特徴と言えるかもしれません。

資本主義の世界への増殖=グローバリズムは、貨幣による生産/消費活動が、「あなたはどこにもいない唯一のあなたなんだよ」と覚醒させることである。そこにあるのは正義ではなく、利他性を満足させ、そしてさらなる利他性への欲望を加速させるという、消費への中毒によっているのである。

かつての日本でもそうであったし、少し前では中国でも見られたように、「マクドナルド」というグローバリズムの初上陸が途上国で祭りになるのは、まさにこれを象徴しているのではないだろうか。

「自由はなぜ勝ち得たのか?」http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20041025#p1

その意味で、ディズニーランドはマクドナルドと並び、消費社会の象徴でもあります。




ディズニーランドの快楽


たとえば一般的な遊園地のジェットコースターは激しく人体を揺さぶり生理的な恐怖をあおり、「生理的な快楽」を与えます。安全で、生理的な刺激をどのように与えるかという設計に情報技術は使われますが、さらには情報技術は、広報という形で、「楽しい遊園地」「世界一のジェットコースター」と宣伝され、「まなざしの快楽」を生み出します。

ディズニーランドの快楽は、乗り物の「生理的な快楽」よりも、むしろ「ディズニーランドを楽しんでいるのを見ていたように」自分が楽しんでいることを見られているという「まなざしの快楽」をより発展させています。だからディズニーランドは、ディズニーランドを楽しむのように、楽しまれます。そこにいること自体が、内的に特別であるという典型的な「まなざしの快楽」の構造を持っています。

たとえば、ディズニーランドに行くと、まず入口で頭にディズニーキャラクターのカチューシャ型の耳をつけている女の子が沢山いますが、楽しんでいると見られているまなざしへ自らを投入することの証でしょう。




ディズニーランドという自閉世界


遊園地の新しいジェットコースターなどは、「生理的な快楽」が満たされることによって、「消費」されてしまいやすいが、ディズニーランドは、消費されないように、リピーターを生むように、「まなざしの快楽」が活用されています。ディズニーランドは、楽しんでいるように演じていることを忘れさせ、本当に楽しんでいるように、「情報技術によって、まなざしのネットワーク内の差異化運動のスピード感」を高め、「まなざしのネットワーク」へ没入させるように仕掛けられています。

テーマパーク内の情報技術を駆使した設定されたディテールと、次々に繰り出される催し物の物量は、子供は子供なりの、大人は大人なりの、はじめての人ははじめての人なりの、マニアはマニアなりの深度で差異化運動を行えるような階層的な深度をもった構造になっています。

たとえば何気なく配置されたアトラクション内のドアでも、一つずつ手書きのマンガのように異なった形をしています。このようなディテールに気が付くことが、「上から二冊面の本」を買うように、「まなざし」として機能します。

基本的にディズニーランド内には現前する「他者」はいません。ディズニーの着ぐるみや係員は、マクドナルドの店員と同じように、他者ではない、シミュラークルの一部です。そしてさらに大きな効果があるのが、ディズニーランドがいつも「混雑」しているということではないでしょうか。平日でも混雑していますが、彼らは現前しない、内的な「まなざしのネットワーク」の住人であり、彼らと「子供の運動会でハンディカムを取る親のように」、差異化運動を加速させます。だれがもっとも「ディズニーランドを楽しむのか」という競争が生まれています。

このような差異化運動の加速がディズニーランドという内部を形成し、外界とは切り離された閉鎖性を高めます。ディズニーランドは主体内の一つの自閉的な世界として機能し、「まなざしのネットワーク」における差異化運動のスピードを加速させる快感を生んでいます。そしてこれは、ディズニーランドに特別な構造ではなく、現代の快楽の構造です。


ボクですか、たいへん困ったことにディズニーランドにいくと楽しいです・・・