なぜもはや「動物化」だけでは生きられないのか 1  「動物化」をめぐって その3

pikarrr2007-07-12

環境問題と「資本−ネーション−国家」


たとえば環境問題を考えると、「資本重視の対策」とは、日本が進めるような技術革新である。環境の優しい製品を販売し、資本は活発化し、環境問題も解決される。これが資本中心の対策である。しかしこのような対策がうまくいっていないことは明かである。なぜなら、そんなせずにただ安い商品を売る方が儲かるからだ。国家的な補助政策があってかろうじて、成り立っている。

「ネーション重視の対策」とは、環境問題を欲望の対象とすることである。簡単にはダイエットブームのようなものである。食事制限、運動は辛いがこれを、逆に流行りもののようにみせる。みなが求めているものとすることで、欲望の対象へ逆転する。これは少しずつ成功している。いまや「環境にやさしい」のかっこよさは、子供にまで浸透している。しかし強い欲望の対象までにはなりにくいのが、現実である。多様な趣向のコミュニティが乱立する中で、環境問題へ感染するのは、グリンピースぐらいだろう。

そのように考えると、国家の機能が重要になる。資本への補助、あるいは環境税のように、上からの力が働かなければ、環境問題のようなものは機能しない。かといって、強い国家としての政策は、逆に資本やネーションの動きを抑制し、環境問題を悪化させる。国家は、資本、ネーションの動きを活性化しつつ、バランスをとり、機能する必要がある。


「市場」は存在しない


このように考えると、リバタリアンが考えるような「市場」は存在しない。市場なんかいい加減だ。日本にいるとわかりにくいけど、価格なんかだいたいいい加減で、日本人だとボラれまくり。市場価格なんてのはほんと市場のごく一部。これは発展途上国で、市場がちゃんと機能していないからというかもしれないが、先進国だって、数百億とか、反復性のない買い物など、もうボリまくりの世界である。

貨幣による等価交換という自由で、平等な関係は存在しない。貨幣は等価交換という実現する道具であって、道具を使って実現している現実とはもっと複雑なものであり、等価に交換できない人間関係だ。彼が好きだ、嫌い、あるいはコミュニティへの帰属意識、排他意識などの想像的な力が作用している。

アーキテクチャー化によって自由を触発して創発性を重視するリバタリアン的な自由は良いとしても、その裏でアーキテクチャーへの楽観的な信頼が隠されている。そして人間の持つ人間化=(幻想の)共同体への執着が軽視されている。




「信頼」の力学(帰属と排他の力学)


勝ち組は当然勝ち続けたい。自由な競争をするよりも勝ち組同士手を組んで、負け組を排除しようとする。これは勝ち組同士の利己的な契約というだけではなく、継続した繋がりの中で、「信頼」の力学(帰属意識と排他意識の力学)が働くだろう。

そして勝ち組/負け組のような保守的な「コミュニティ」によって、固定化することが起こる。だから自由を促進する意図的な、行政的な制度は必要になる。それは規制緩和ということよりも、もっと積極的な弱者救済のシステムが必要じゃないだろうか。

リバタリアンは、「信頼」のような曖昧さが排除され、アーキテクチャーによって管理された純粋な(動物化された)市場を夢想しているが、そのようなものはいつまでたっても存在しない。市場はいつも「信頼」の力学に基づいた曖昧な(人間化された)市場でしかない。




ボロメオ輪のバランス


ボクがいう人間化=信頼の力学(帰属意識と排他意識の力学)を重視する姿勢を社会主義で考えると、国家社会主義では、中央集権において信頼の力学が作動し、身内の強力な権力体勢によって、まさにソビエト連邦、あるいは北朝鮮のような独裁的な凶行に至るだろう。あるいは中国のような汚職国家が生まれてしまう。

ではアソシエーション社会主義においては、柄谷の失敗がなぜ起こったのか説明する。あの試みが柄谷への転移集団でしかなかったことは良く言われる。すなわち柄谷を中心に信頼の力学が作動したということだ。アソシエーションはリバタリアンと同じく、信頼の力学(帰属と排他の力学)を軽視して、自立し強い個人というものに重きをおきすぎるということだ。

資本は近代以降の工学化の発展によって、社会の中心として作動し、人々を動物化する。しかしだからこそ、その裏で(小さな)ネーションとしての人間化が作動し続ける。このバランスをとるために、国家としてのある程度の機能は必要とされる。これは、柄谷のいう「資本−ネーション−国家」というボロメオ輪のバランスを考えることが重要であるということ。

ボロメオの輪

イタリア・ルネッサンス時代有名なボロメオ家の紋章として用いられていたのでボロメオの輪と呼ばれている。この三つの輪は分けることは出来ないが、どの二つをとってみても連結していない。

http://www4.zero.ad.jp/hkabuto/fukashigi/a01.html

(つづく・・・)
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