なぜ「萌え〜」といえば高速に愛を手に入れることができるのか?

pikarrr2007-07-20

「私はあなたに萌えています」


好意のある人に「私はあなたを愛しています」ということに対して、「私はあなたに萌えています」というとどうだろうか。この違和感はなんだろうか。ここに「愛の関係」「消費の関係」の違いがある。萌えのフェティシズムとは、本来は消費の関係であるものを愛の関係へと倒錯している。

「消費の関係」
・減算の関係。
・相手を商品としてみる。商品はそのはじめにすでに価値があり、使っていくことで価値が減算していく。そしてどこかでそれを使い捨てて、代替品を手に入れる。
・他者を手段とする「他者」回避。
・処女信仰


「愛の関係」
・加算の関係。
・関係していくことで、他者がかけがえのない者、代替がきかない関係となる。ある意味で自らの一部となり、自分を犠牲にしてでも、その他者を守るようなことが生まれる。
・なにを考えているかわからない他者に対してお互いに根気強く、向き合っていかなければならない。
・他者を目的とする他者との関係構築


「なぜ消費は減算で愛は加算なのか」 http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20070719




萌えという「高速欲望」


たとえば宮崎アニメの特徴に、ナウシカ、コナンなど主人公が、成長して超人になるのではなく、なぜかすでに超人であることが上げられる。成長という地道な努力の欠落が、宮崎アニメの爽快さを支えている。

さらに宮崎アニメの主人公には処女性、幼児性(ロリータ)がある。「萌え」が成人女性よりもロリータに向かうのにも、この成長過程が消失した存在であるところにキーワードになっているだろう。

宮崎アニメにも内在する爽快さは、消費社会の特徴に繋がるのではないだろうか。面倒な愛の関係よりも消費の関係へ。消費の関係のような(お金を払うような)素早さで、愛の関係を手に入れる。ボクはこれを「高速欲望」と呼ぶ。さらに消費材の特徴は誰もまだ使っていないこと、最初が「無垢」であり、使うことで古くなる。ロリータの無垢性とは「高速欲望」を想起する。

すなわち萌えとは、高速欲望である。「愛している」ということは重いが、「萌え〜」ということで、高速に愛を手に入れることができる魔法の呪文である。これに対して、若い女性の「高速欲望」の呪文は、「かわいい〜」である。

消費社会の特徴

・面倒な愛の関係よりもお金で解決する消費の関係へ
・愛への強迫的な不安・・・愛の関係の欠乏からくる不安は、愛を求めて過激な行為に走ってしまう。極端な「人間化」への転倒。
「高速欲望」・・・愛の関係の欠乏から、消費関係のような(お金を払うような)素早さで、愛の関係を手に入れる
「商品への倒錯(フェティシズム)」・・・消費の関係であるが、愛の関係であるように倒錯する。アイドル、キャラクター、ペットなどへ愛
「想像のコミュニティ」・・・消費の関係を起点に同じ趣向の他者たちと「想像のコミュニティ」を形成する。


「なぜ消費は減算で愛は加算なのか」 http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20070719