なぜ燃料電池は失敗したのか 

pikarrr2008-10-01


ITからエネルギーへ


金融がほんとにどうしようもなくなっていますね。今回の発信はアメリカのサブプライムローンにあるといれていますが、金融なんかはそもそも詐欺まがいです。今回の崩壊の発端はお金が石油などエネルギー資源関連に流れたからでしょ。証券が危ないから燃料に流れたのか、燃料に流れたから証券が危なくなったのか問うことに意味はないですが、ITバブル崩壊の前にすでにエネルギー資源関連へ投資する傾向は始まっていました。

燃料電池が注目されたのもこのような背景からです。燃料電池ブームの発信が環境問題後進国であるアメリカであるのは象徴的です。パソコンと同様にガレージに起源を持ちます。燃料電池はエネルギーの民主化というリベラルなエネルギー革命への夢により始まったのです。




アメリカの「リベラルな経済革命」


アメリカの「リベラルな経済革命」のはじまりはフォードによる自動車の大量生産にはじまります。高価で一部の特権の乗り物であった車を、大量生産により人々へ安価で提供する、すなわち経済的に民主化する。そこではただ安くなって買えて交通が便利になったという以上の意味、自由と解放のイメージをもち一大ブームとなります。そして発展した市場は新たな生産者、さらにそれに帰属する多様な商品へと発展し、好景気を牽引します。さらには一つの文化となります。

以後、このような経済的なリベラル革命はアメリカを象徴する方法論となりました。アメリカの根底にあるリベラリズムウェーバーがいうようにプロテスタンティズムにまでさかのぼることができるでしょうが、20世紀にアメリカが大成功しえたのは、リベラルな思想がこのような経済的方法論と融合しえたからでしょう。

その後、このような方法論は、電化製品、音楽、コンピューター、通信、そして金融へとつぎつぎ拡大していきます。これがアメリカのドライブ(駆動力)でありつづけました。そしてさらに最近のネオリベラリズムはこのような方法論を特に情報と金融の民主化を中心に、世界へと拡散した結果といえます。




「エネルギーはノリが悪い。」


このような方法論を展開することが難しい分野としてエネルギー分野があります。エネルギー供給は国家に近い領域で中央集権的な政策によって運営されます。一時期、燃料電池を含んだ分散化電源が注目されたのは、各家庭、あるいは小規模な地域で自活的に発電を行うことで、従来の中央集権的なエネルギー分野を民主化するという革命という可能性のためです。

現実問題としてエネルギーを民主化するメリットはなにか。現在、発電所で燃料から電気をえるには大きなエネルギーロスが発生しています。家庭への送電ロスを考慮すると半分以上が排熱として捨てられています。家庭の近辺で発電しても同様にロスは出ますが、排熱を暖房、湯沸かしなどへ活用すれば、全体としてエネルギー効率を上げることができ、コストが低減されます。

原理的にはそのようになりますが、分散化電源装置の初期投資を家庭で負担することを考えると、発電所から電気を買うことに比べてコストメリットがでないことが現状です。たとえば家庭で電気を作ると言う方法で太陽電池が一部普及していますが、国からの補助金がなければメリットがでないのが現状です。燃料電池などのさらに複雑な装置ではなおさらです。

様々な「リベラルな経済革命」は単にアメリカの政策というよりも、起業などの市民レベルの盛り上がりが力となってきました。それがリベラルな革命の力です。経済的なメリットを含めて、エネルギーとこのような「リベラルな経済革命」は相性がよくないようです。この当たりがアメリカが環境問題後進国である理由かもしれません。感覚的にいえば、「エネルギーはノリが悪い。」




エネルギー分野というアメリカの躓きの石


やはりエネルギーは石油、天然ガス原子力などの化石燃料に頼らざるおえないでしょう。BRICsなどの経済発展と関係して化石燃料価格の高騰は起こり続ける。それは単に資源不足ということではなく、投機的な面が強くても、今後、絶えず資源不足の危機感として、世界の最重要問題となるでしょう。

アメリカも今後、エネルギー関連の問題に対して戦略を駆使する必要がありますが、世界を席巻したアメリカニズム、ネオリベラリズムの勢いとは違って、エネルギーを巡る情勢はアメリカにとって躓きの石となりつつあるように思います。

たとえば環境問題の世界的削減目標へ不参加に始まり、最近ではバイオエタノールへの過剰な傾斜によって、世界的な食料不足を引き起こしたと、問題にされています。さらになぜアメリカがこれほど中東情勢にこだわるのか、という理由もエネルギー戦略と切り離せないでしょう。そして今回の金融証券の問題も、資本が資源へと流れたことと深く関係します。




アメリカは「帝国」から一強国へ


そもそも、アメリカの「リベラルな経済革命」という消費型資本主義そのものが問題視されています。それは、世界の保守化傾向ともつながり、近年言われてきた、ネオリベラリズム、フラット化、「帝国」などでイメージされるタームは見直されるような新たな流れが見出させるのではないでしょうか。

化石燃料は領土に帰属し、領土は国家によってもっとも基本な構成要因です。グローバリズムと言われながら、その裏では中国、ロシア、中東諸国など、領土重視の国家戦略の時代が再来しつつあります。絶対主義、帝国主義にみられるようにグローバリズムはそもそも国家ととても相性がよいのです。アメリカもこのような保守化傾向は不得意な分野ではないと思いますが、このような情勢の中ではアメリカは「帝国」から一強国でしかなくなります。
*1