なぜ振り込め詐欺はなくならないのだろうか

pikarrr2009-01-05

振り込め詐欺と幸福な親世代


2008年の振り込め詐欺被害額は数百億円になるらしい。なぜいまだに振り込め詐欺なんかにひっかかるのか、ほんとに不思議に思う。多くが年配の人が被害になっている。その手口の多くは親の情に訴えかけるという方法である。

この親の子供への甘さはなんだろうか。いまの年配の世代はある意味で幸せな世代である。高度成長期、正社員としての終身雇用、年功序列をいきて、退職金は確保され、年金も保証されている。その後の世代のことを考えると、もらい逃げできる最後の世代とも言われている。

その分、男はサラリーマンとして仕事一筋で、女性は家庭に入り、子供を懸命に育ててきた。彼らの特徴は、ある程度貯蓄はあるが、仕事から解放されたいま、他にすることがないという世代である。そして子供に依存する、子離れができない世代。このような傾向が、実は引きこもり、ニートを生む構造に繋がっているのではないだろうか。




中流という幸福な時代の延滞


さらにいえば、日本の社会構造そのものがこのような世代を優遇し、またニートを容認している。日本の企業の特徴は既得権益、正社員の雇用確保を優先することである。不況にあえば、新卒採用を控え、人件費の増減を抑えるとともに正社員の賃金は確保される。

このような日本の経済構造は、家庭単位で考えれば、親の世代に賃金を支払うことで、子の世代はニート、フリーター、あるいは派遣社員などとして十分に賃金を回さなくてもやっていけることで支えられる。

意図的でないにしても、いつまでも親の世代に依存する子の世代という構造で成り立っている。問題は単に子供が自立しないということだけではなく、かつての総中流という幸福な時代の構造の延滞である。

金融バブル崩壊後、派遣社員切りの問題など、不況は底なしの様相をていしているが、振り込め詐欺にこれだけ資金を回せるだけの親の世代の余力を見ると、とりあえずは、親元へ身を寄せるのが無難かも知れない。




老人市場と詐欺と雇用創出


しかしかつての総中流という幸福な時代の延滞しつづけることはもはやできないだろう。団塊の世代の大量退職のように正社員は自然削減していくだろう。あとは新入社員の採用を抑え、人員調整できる派遣社員を大量雇用する。それが新たな日本企業がめざす労働構造である。

仮に今後、派遣社員を簡単に切れないようになっても、企業全体の人件費のパイは決まっているので、正社員を含めた雇用調整が行われるだけで、日本の労働環境そのものが改善されるわけではないだろう。さらに国内における日本企業の今後の成長はむずかしい状況にある。

終わらない振り込め詐欺の要因の一つに「老人」という退屈があるのならば、それは資本主義経済のもっとも得な分野ではないだろうか。必要な物を消費するだけでは資本主義は成立しない。いかに退屈を消費させるか、によって資本主義は成り立ってきた。

重箱の隅をつつくように市場を創出する資本主義としたことが、まだまだ老人市場を攻略し切れていない。それよりも、IT分野、グローバルな外需という「華やか」な時代が続いたためかもしれない。その隙に振り込め詐欺団が先乗りし荒稼ぎしている。リフォーム詐欺など老人市場は詐欺の温床になりやすい。老人市場を健全に開拓し、それとともに大量の雇用を創出することが今後の課題だろう。
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