ビートルズ 左脳型と右脳型の天才の融合

pikarrr2009-09-18

Lennon/McCartney」

ザ・ビートルズ、リマスター盤が打ち立てた記録と軌跡 http://www.barks.jp/news/?id=1000053156


ザ・ビートルズ最新リマスター盤は、9月9日の発売から3日間にしてアルバム換算で約80万枚の追加出荷しており、初回出荷の約100万枚と合わせると180万枚を突破していたことが分かった。

オリコン・アルバムランキングでは、全作品がTOP100入りも記録し、7/20付でマイケル・ジャクソンが樹立した邦・洋アーティスト通じての歴代1位記録である「アルバム同時TOP100入り(16作)」に並んだほか、アルバム「TOP10獲得作品数(19作)」「最高額TOP10入り(39,800円)」の洋楽アーティストの2部門でも1位という新たな記録を打ち立てた。

ビートルズのリマスター版(ASIN:B002FVPL9M)が話題になっていますね。NHKでも特番がありました。期待していたほど新たに映像はほとんどなかったですが。ボクもちょっとビートルズマニアなんです。どの程度か、といえば曲を全部知っているのはもちろんですが、誰が作ったかわかります。

なんだたいしたことないと思うかも知れませんが、ビートルズの楽曲のクレジットはLennon/McCartney」となっています。現に多くが共作なわけですが、楽曲によって主担当がいます。最初にどちらかがつくり、もう一方が補助するように作られました。そしてマニアになると、あーこのメロディはレノンぽいなあ〜とか、マッカートニーだなと聞き分けられたりするわけです。

「ポールとぼくは、15のときに、取り決めをつくったんだよ。法律的なものじゃないんだけれども、協力して曲を書こうって決めたとき、それが何であっても、ふたりの名前で出すことにするって取り決めをね。(レノン)」




レノンは左脳型、マッカートニーは右脳型


このようなレノンとマッカートニーの違いを言葉にするのは難しいのですが、簡単に言えば、レノンは左脳型(論理/分析/計算)で、マッカートニーは右脳型(感覚/直感/イメージ)という感じでしょうか。

レノンの作る曲は骨組みとしてのコード進行がわかりやすいように思います。これはギターで作曲する場合の特徴でもあるのですが。コード進行をたどりながらメロディーを探っていく。そしてレノンはアイディアマンですから、基本的なコード進行に所々不自然なコードを組み込んでいく。これはコード進行に限ったことではないのですが、計算しながら仕掛けて作品を作り上げていくという意味で左脳型(論理/分析/計算)だろうということです。たとえばソロになったあとでも、「マザー」の始まりの不気味な鐘の音、「スターティングオーヴァー」の始まりのトライアングル?の音など、仕掛けが印象的な作品が多くあります。

ビートルズは初期の荒削りなバンド時代から、「ラバーソール」リボルバー、そして「サージェントペパー」という完成へ向かって、バンドとしての演奏を離れて、レコーディング技術を駆使した作品の創造性を追求します。それまでアルバムはただ楽曲がつまったものでしたが、アルバムを一つの作品として作り上げてのも「サージェントペパー」がはじめてと言われています。

このような傾向への大きな原動力になったのはレノンの左脳型(論理/分析/計算)思考ではないかと思います。そしてビートルズがただの流行バンドではなく、いまも愛されている一つの理由が、このようなロックミュージックを創造した原点に溢れているということです。




レノン-マッカートニーという奇跡


レノンの左脳型(論理/分析/計算)に対して、マッカートニーの右脳型(感覚/直感/イメージ)は微妙なバランスを保ちます。マッカートニーの天才は、なんといってもそのメロディーラインです。どこから湧いてきたのかわからないように、人の琴線にふれる絶妙なメロディーライン。「イエスタデー」はほぼマッカートニーだけで作られたものですが、世界中でもっともカバーされている楽曲です。レノンだけでは「固いのもの」になってしまう、マッカートニーだけでは「甘いもの」になってしまうところを補うある絶妙なバランス。

これらの二元論はあくまでイメージです。初期のシングルはレノンが作っていたといわれるように、レノンはレノンで天才的なメロディーメーカーでもあります。レノン-マッカートニーは二人の天才が相乗効果を果たしながら起こした奇跡と言えます。




ビートルズという奇跡の終焉


「サージェントペパー」後、主導権は徐々にレノンからマッカートニーに移っていったとも言われます。この時期から共同作業が減っていきました。それがホワイトアルバムに現れています。よく言えば多様、悪く言えば散漫。まるでソロ作品の寄せ集めです。そして、レノンがどこから過激な方向に向かうのに対して、マッカートニーは円熟期を迎えたようにビートルズ最大のヒット曲「ヘイジュード」など次々と名作を発表します。

レノンのビートルズという創造への意欲は、「サージェントペパー」という奇跡によってピークを迎えたのではないでしょうか。そしてオノヨーコと出会うのです。オノヨーコとの出会い、合作は新たな創造性の爆発です。しかしそれはあまりに前衛的で大衆に受けいれられるものではありませんでしたが。

レノンが前衛芸術家のオノヨーコと気があったことは、左脳型(論理/分析/計算)の創造性が似ていたからではないでしょうか。横尾忠則「もはや論理がなければ芸術はできない」というようなことを言っていましたが、現代の芸術では、天才的に感性で作品を作るだけはダメで、現在までの文脈を理解し、それをいかに破壊するかという論理的計算と仕掛けが必要です。現代では創造は偶然生まれるのではなく、作り出すのです。オノヨーコはレノン以上のアイデアマン、まさに仕掛けの前衛芸術家でした。

マッカートニーは最後まで継続を望んだといいますが、結局、マッカートニーが脱退を発表しますが、そのときにはビートルズにはだれもいなかったのです。奇跡は終焉を迎えます。最後の創作品アビーロードの最後は、レノンとマッカートニーが持っていたメロディーの断片をつなぎ合わせていく、一部では最高傑作とも言われる形で終わります。まさに最後の融合の奇跡です。


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