ドラマ「家政婦のミタ」はなぜ面白いのか  金こそ最強のヒーローである

pikarrr2011-12-08

金こそ最強のヒーローである


ドラマ家政婦のミタhttp://www.ntv.co.jp/kaseifu/。毎週楽しく見ています。すでに視聴率30%近と大受けしています。残り3話を前に語ってみましょう。

「ミタさん」には現代的ヒーローの快感がしっかり組み込まれています。現代のヒーローが、能力を身につける努力を見せずに、最初から超人的な力を備えて行使することに人々は快感を感じます。たとえばエヴァのシンジにしても、ごたごたいいますが、結局なんの努力もなくいきなり超人的な力を発揮して一瞬で問題を解決します。逆にあまりにベタなヒーローすぎてごたごたいうことで変化をつけているとも言えます。

このような最近のヒーローの快感のモデルは「消費」です。商品の快楽はただ金を払うだけで、望んだものが手に入るということです。近年のネオリベラリズムな社会では金がすべてですから、いろいろ努力するのではなく、金があれは一気にすべてが手に入り、問題が解決する。

ミタさんは家族を失った深い喪失の果てに、笑顔失います。しかしそれはたいした問題ではない。あくまでもミタさんが貨幣(商品)の位置にいるための理由づけでしかない。

ミタさんは金の対価としてしか働かないし、さらに金を通してしか関係しない。ただし金を払えば一気に問題を解決してみせる。すなわち徹底的に「商品」であろうとすることはまさに現代の「真の」ヒーローです。ヒーローは金ではなく正義で動くという言説に隠された真実、ヒーローの快感とは貨幣交換のメタファーである。すなわち現代において、金こそ最強のヒーローであることを暴露しています。




「モンスター」を退治するミタさん


さらにもう一つ徹底的に「商品」であろうとすることの快感として、「モンスター」退治があります。最近医者や学校の先生などサービス業として感情労働をする人たち、すなわち「商品になる人たち」のストレスが社会問題になっています。金を払えばなんでも手にはいると勘違いする「モンスター」たちが無理難題を言ってくる。そして「商品になる人たち」が対価で割り切れない感情労働に強いストレスを抱える。

ミタさんは、このようなクレーム・モンスター退治としても強さを発揮します。対価としてしか働かない、しかし対価に対してはドライに、対価としてだからドライに、そしてすばらしい結果を生みだす。




カヘイ系ミタさんは人間に戻れるのか


ボクは現代の新たなヒーローとして、パート2も作られるのかなと思っていました。いまの家族が再生されて、またミタさんが新たな家庭へ派遣される。しかし製作側の考えは違うようです。続編は作らず、本編で完結させるということです。

以前、同じ遊川和彦の脚本で雰囲気が似たドラマに女王の教室がありました。『この物語は 悪魔のような鬼教師に小学6年の子供たちが戦いを挑んだ一年間の記録』。冷徹な鬼女教師が成績の悪い児童や反抗的な児童をいじめる。その裏には社会の厳しさを教えて乗り越えさせるような試練だった、みたいなことでしたが、なぜそこまでするのかというオチがつかない不快な終わり方だったので、今回も心配です。

ミタさんをヒーローから人間に戻すということでしょう。震災後の再生を意識したみたいなことでしょうか。この挑戦に興味はありますが、もったいない気がします。セカイ系シンジのあとをつぐヒーローとして、「カヘイ系ミタさん」の需要はまだまだ高いと思うのですが・・・

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