Iotは日本人の慈悲を世界に発信する装置になれるか 慈悲型資本主義その2

pikarrr2016-09-07

なぜ日本人はITに失敗したのか


ガラパゴス化などで象徴されるように、日本人はITに失敗した。失敗の一つの理由は、慈悲故にITによって、サービスの質が落ちることを、売手も、買手も見過ごせなかった。世間が許さなかった。また日本人は慈悲とサービスが混同して、サービスは慈悲によりただと考えるから、商品として成立しにくい。おもてなしをネット化できなかった。慈悲では、人をコストに還元できない。人のインターネット、すなわち人のコミュニケーション中心では、失敗した。

再度言えば、慈悲型商品とは、必要としない人にこそ求められるように改善する。また提供されていると気づかないぐらい便利に提供する、高度な商品であるか、さらにサービスはまさに慈悲の領域で、商品と考えない。それが高価な商品であることを、世間が許さない。すなわち高級なサービスは高く、金持ちのみが享受するという格差は、世間的に許されない。




慈悲とスマート化

IoTが普及した世界でいうモノとは、ユーザーからするとモノであることを忘れさせ(そもそもモノであるかどうかさえ気にならなくなり)、モノが自律的に判断した上で、全体の中で最適な制御を行うようになると言えます。これをモノのスマート化と捉えています。P45


IoTまるわかり 三菱総合研究所編 日経文庫 ISBN:453211344X

では得意の製造業とITが融合した「IoT」の領域ではどうか?もののインターネットは、人のコミュニケーション以前なので、慈悲型商品によって、また日本人の優位が戻ってくるかもそれない。すなわちサービスをコストにランクにするのではなく、誰にも等しく、安価にサービスを提供できる。ここで慈悲は、おもてなしという高度なサービスを安価に提供できる可能性がある。

ガラパゴス化の経験を踏まえれば、日本製品は過剰であった。さらにはそれは高機能な付加価値として、高価格になった。低価格、低機能に負けた。Iotの場合、情報機器はムーアの法則など、急激に能力が向上する。それに合わせて、価格を上げずに、価値を上げていく可能性はある。高等な慈悲型サービスを安価に提供することで、世界的な競争に買っていく。世界中で、日本の慈悲型サービス商品が求められる。




欲望型資本主義と慈悲型資本主義


セイの法則を超えて資本主義が発展するとき、

欲望型資本主義(西洋式)
 消費者の欲望を想起させ続ける。欲望とは他者の欲望への欲望であり、終わりがない。主体欲望論。

慈悲型資本主義(日本式)
 求めていないと人のためにこそ、利便性を提供する。買った人は求めた人になり、さらに求めていない
 人が生まれ、終わりがない。集団的充足論

いままでのインターネットは欲望型資本主義であった。主にフォロー、いいね、すなわち関心を欲望して、活性化されてきた。欲望型。収益も関心の数が左右した。これからのインターネット、IoTは、利便性が提供されているさえ気にならなるように提供される。ないときに快適さに気がつく。慈悲型となる。求めていないと人まで配慮して、利便性を提供する。買った人は求めた人になり、さらに求めていない人が生まれ、集団的充足に終わりがない。

ユーザーはなにを求めているか、ニーズをマーケティングして、商品を提供する。世間になにを提供すれば世間は豊かになるか、配慮して商品を提供する。ニーズはまだないのでマーケティングできない。IoTでいかに慈悲を伝えるか。世界に慈悲を届けるか。

IoTの応用範囲は非常に広いが、その中で社会との密着度が小さい方が実現化は簡単である。・・・その意味でIoTが実現するのも、まずは「製造業」という特定の応用分野でというのが、インダストリー4.0だが、その他にも応用分野として物流に注目するとか、医療に注目するとか、さまざまな応用が考えられる。その中で、インフラとして現在我々が注目しているのがサービス分野である。

2020年の東京オリンピックパラリンピックがひとつののきっかけだが、それを除いても海外からの観光客の順調な伸びから観て、年間2000万人達成は間近だ。2020年には3000万人という予測が出ている。このような状況で、日本側の「おもてなし」体制の現状は、はなはだ不安ということで、2015年から始めたのが、IoT的連携をベースとした新しいサービス体制のインフラ作り、私が「サービス4.0」と呼んでいるものだ。

「良いサービス」、「おもてなし」の基本は、お客様を識別することから始まる。例えば気の利いた懐石料理の店なら、間をおかず訪れたお客様に対し前回と異なるお品書きで迎えるのは基本だ。それを実現するには、そのお客様が前回いつ訪れたか、その時のお品書き何だったか、さらには食も好みとか、さまざまなお客様の情報を把握している必要がある。そのお客様を顔のない「客」ではなく、特定の「お客様」として識別することが「サービス」の基本であり、つまりは現実世界の識別と関連情報の記録と利用であり、その意味ではまさにIoT。いわば「IoG Internet of Guest」なのである。

・・・お客様を識別すること、そして「お幾つくらいか」「前回何を頼まれたか」「何がお嫌いだったか」「アレルギーはあるか」「お酒は飲まれるか」といった属性情報を的確にキャッチし、記憶し、それを次の機会に引き出し、それを活かす、つまりIoT的な情報処理が「おもてなし」の基本であり、それを実現するための基盤がサービス4.0なのである。P80-82


IoTとは何か 技術革新から社会革新へ 坂村健 角川新書 ISBN:4040820584