安倍政権の本当の問題はなにか? 保守とリベラル4

安倍政権が目指すのはマクロなワークシェアリング


安倍政権の問題はなにか?化石左翼が言う、モリカケ問題、憲法改正はどーでもよくて、良く言われるのが、賃金が上がらない、母子家庭、子供の貧困化がある。これは安倍政権の成果とされる雇用の安定化である、失業率の低下、新卒内定率の増加と裏表の関係にある。

日本の雇用の特徴は雇用に流動性が低いこと。いまも年功序列の面が強い。すると同じ会社で正社員であることが有利で、労働者は正社員利権をはなしたくない。会社側にも、集団的に仕事するから継続した社員を望む、解雇することは社会的なイメージが悪い、労働組合の力などが働く。

そして安倍政権は、正社員利権を安定化し、より多くの正社員利権にありつけるようにすることが、社会保障であり、最大の経済政策になる。働き改革もそれにそれを進める。定年延長を社会保障として、年金支給の年齢を上げる。非正規と正規の差をなくすとは、実質、正社員を増やすことになる。

これは、マクロなワークシェアリングの面を持つ。できるだけ多くの人に正社員利権を分け与える。この流れの中で企業も正社員利権を守ることに資金を使う。すると、賃金を上げることを保留する傾向が出てくる。

しかしこの正社員利権からこぼれ落ちた人々は、苦しくなる。一家に一人正社員がいれば、家庭は潤うが、一人もいない場合に経済的に厳しい状況となる。その代表が母子家庭だろう。時間的に制約がある母は敬遠され、女性は正社員にありつきにくい。




かつての日本の雇用形態=正社員利権への回帰


西洋では職の流動性が高い。キャリアアップのために転職は普通だし、企業も景気が悪くなると、簡単にリストラして、景気が良くなると雇用する。労働者も転職が容易だ。そして無職期間の社会保障は国が担う。しかしそのかわり、格差は大きい。能力主義の世界だから、能力に合わせて、選別される。日本は、正社員利権にありつければ、社長から現場労働者の地位より、年功序列の方が差があり、比較的格差は小さい。

小泉政権民主党政権も目指したのは、日本の正社員利権からの脱却である。小泉政権ネオリベラルでは、雇用の流動性を高めて、能力主義にする。その結果、生まれたのが大量の非正規である。労働の自由化の名の下に、企業は正社員枠を狭めて、非正規として必要なときに必要だけ雇い、必要なきときは解雇する、都合の良い非正規枠を増やした。民主党政権のリベラル派は、能力主義はそのままに国の社会保障で補完しようとして、社会保障費は増大した。これらに対して、安倍政権の政策はかつての日本の雇用形態=正社員利権への回帰である。




安倍政権は長期的な問題に対応できるのか


このように安倍政権が長期政権として支持される一つの理由は、徹底したリアリストである点があるだろう。高い理想を掲げず、西洋の思想、システムを優れていると飛びつかず、日本人にあった、最も実質的に成果の上がる施策を実行していく。だから逆に安倍政権の本当の問題は、日本の構造的な問題、人口減少にどのように対応するのか。実働的過ぎる故に長期的な問題に対応できているのか。

たとえば憲法改正はいまそれほどこだわる問題か。憲法改正したから、北朝鮮との関係がすぐ変わるわけではない。現に自衛隊はそれなりの規模であり、安保法案も成立した。日本人による憲法改正は、自民党結成以来の目標であり、その主力メンバーの安倍首相のおじいさん岸信介の悲願でもあった。そして首相の期間というのは限られていて、できることも限られている。結局、歯車を一つの進めることしかできない。小泉政権の最優先は郵政改革だったのか?でもそれは小泉の長年の悲願であった。それによって、政治の流れが変わった部分はある。

そして安倍首相悲願は憲法改正。本当は憲法に軍隊の保持を書きたいところだろうが、まずは今のままで、自衛隊を記載する。まず妥協しても歯車を一つ回した。そうすれば左翼の教典化している憲法が法に戻り次の改正がやりやすくなる。最初の第一歩がなければ次がないという意味で重要だが。




安倍政権時代は古きよき時代となる


未来には、安倍政権時代は、古きよき時代だったと言われるだろうが、ポスト安倍の時代はどうなるのか?正社員利権政策を継続するのか、世界の大きな流れの中では、職の流動化に戻る可能性が高いが、それに対する解は日本にはまだない。さらにポスト安倍をにらんで語るべきは、人口減少対策、そして移民誘致の推進。これは古代日本にまで遡る日本人とは何かという問題だ。

そしてそこにこそポスト安倍をにらんだ、野党が主張すべきポイントがあるのではないか。せっかく小選挙区制になりワンチャン政権を取れる可能性があるのに、モリカケ固執して、政策を語らない。はなからどうせ国民の支持などえられないと政権を取る責任を放棄して、政治的ガヤという既得権益に安泰する。いかに国会議員に居続けられるか、ただ自己保身に走る。それにしても、小池新党の公約はぱっとしなかった。時間不足、民進党残党との妥協があったんだろうけど。地に足がつかずに、中途半端であることは否めない。ポスト安倍が見えないこと、安倍政権がうまくい来すぎているだけにその反動は大きそうだ。