ドラマ「時効警察」はなぜおもしろいのか。

pikarrr2006-02-06

今クールの中でずば抜けて、面白いと思うのが、ドラマ時効警察http://www.tv-asahi.co.jp/jikou/index.html)です。時効課の警察官が時効になった事件を趣味で捜査し、みごとに真相にたどり着くというドラマです。

このシチュエーションのポイントは、

・時効課という時効になった事件の資料を管理、処理するという、組織の中では、「脱社会的」な点
・警察、殺人という緊張的な事件などを、趣味にする点(究極のプチクリ
・趣味なので事件の真相にたどりついても、そこでおしまい、というあくまで趣味である点

難問事件を解決できたことを騒ぎ、自分の手柄とし、時効課という「窓ぎわ」から刑事課へ移動するという「エリートの知」*1へ展開するわけでも、それによって犯人へ倫理的なものを求めるような「芸術家の知」でもなく、どこまでも「フリーターの知」、趣味による楽しみレベルで止める、ということです。ここに究極の「ヘタレサイクル」があります。

そしてこのどこまでも「ヌケた」世界を表現するための登場人物のどこまでも「抜けぶり」「フリーターの知」的人々も魅力です。そして推理のあとに、「この推理が正しいかはどうかは、あとは(犯人の)善意による自供によるものだけです。」というセリフがあるように、全体が「善意」によって支えられています。そしてこの「善意」とは全員が「エリートの知」や、「芸術家の知」のような欲望を持たないという趣味のレベル「フリーターの知」で留まるということによって、成り立っています。

ジャングル化する社会において、「フリーターの知」でサバイバルするもっとも「正しい」姿が表現されているのであり、「歴史の終わり」における極限の「人間のあり方」、極限のスノビズムのパロディが表現されていると言えるでしょう。これを癒し系ドラマといえば、それまでですが、ジャングル化社会の先にある一つのユートピアです。

*1:ジャングル化する社会を生き抜く3つの方法 その2 http://d.hatena.ne.jp/pikarrr/20060205